シンガポールへ海外移住したい、転職したいと考えているが、現地採用で行くことに迷っているという方に向けて、日本からシンガポールの会社に転職して、現在もシンガポールで勤務している私が、リアルな経験を元に、メリットとデメリットを本音で、包み隠さず紹介します。私の場合は、シンガポールで現地採用をすることのメリットの方が大きいと感じでいるので、この先もシンガポールに住み続けたいと思っています。
シンガポールは日本人が現地採用で転職しやすい国の1つ
シンガポールは、海外で仕事をしたい日本人が転職しやすい国の1つです。シンガポールの人口は564万人(2022年6月)であり、そのうち日本人在住者は32,743人(2022年10月)です。日本人在住者の中には、駐在員とその家族、現地採用の日本人、経営者が含まれます。
シンガポールに拠点をもつ海外企業は約7,000社あり、日系企業は約1,600社が進出しています。
日本人で現地採用で転職する場合、日系企業の現地会社に転職する、外資系企業で日本のクライアントを担当するケースが多いです。専門スキルがあり、英語もネイティブ並に話すことができれば、日本市場だけでなく、シンガポールや他市場向けの事業を担当している人もいます。
例えば、外資のコンサル会社に現地採用で転職した友人は、日本のクライアントの東南アジア向け進出をサポートしていたり、外資のIT企業に勤めている友人は、日本市場のクライアントの営業を担当していたりしています。
日本人を含めて、外国から優秀な人材を集めているシンガポールは、2030年までに人口690万人を目指しています(2018年に政府が発表)。少子高齢化が進んでいるシンガポールでは、海外から人材を受け入れないと、到底達成できません。
経験とスキルがある優秀な人材をシンガポール政府や企業は積極的に受け入れていることがわかります。つまり、日本人もシンガポールで現地採用で転職しやすい理由でもあります。
シンガポール現地採用のメリット
<仕事編>
1. 英語が公用語なので、英語が話せる人であれば転職しやすい
私は転職して初めてシンガポールに来たのですが、最初はシンガポールで、英語だけで生活できるのか不安を持っていましたが、実際にシンガポールに来てみたら、ビジネスも生活も全て英語であることに驚きました。中国語やマレー語なども使用されている国ですが、英語さえあれば仕事ができるので、日本語と英語のバイリンガルは転職しやすい国です。
2. 日本語が話せることも、価値になる
シンガポールにある日系の会社のに務める場合、日本語が話せると、日本側の組織や日本人駐在員と日本語でコミュニケーションができるので、日本語が話せることが強みになります。
また、外資系に務める場合には、日本語が話せると日本のクライアントを担当したり、日本市場への進出などを担当ができるので、日本語力が強みになることもあります。
3. 国際的なキャリア形成ができる
これから世界でキャリアを作っていきたい人にとって、シンガポールは国際的なビジネスシーンでキャリア形成ができる点で大きなメリットがあります。シンガポールには、多くのインターナショナルな会社が、アジアの本社を置いています。
特に外資系に入社すると、上司は欧米系で、同僚はアジア諸国から集まったメンバーなどで構成されていることもあります。
通常の打ち合わせも、本社のある欧米のスタッフや、アジア諸国のリージョナルチームとオンラインで実施されることもあります。職種によっては、海外への出張も多い場合もあります。
シンガポール転職することで、将来の可能性を広げることができます。
4. トップクラスの人たちに出会える
シンガポールには世界各地から駐在員や、起業家が集まっています。日系企業や海外からシンガポールに駐在をしている人は、基本的には社長やマネジメントクラスの人であることが多く、そういった人たちと出会える機会が多い傾向があります。
また、起業をしやすい環境を国が整えており、起業家との交流を深めたり、ご自身もいずれは国際的な環境で起業をしたい、と考えている方にとっては、シンガポールはチャンスが多いはずです。
5. 給与アップも狙える
シンガポールに現地採用で転職する場合、転職先の会社が就労ビザを手配する必要があります。そして、その基準が年々高くなっており、最低賃金は月給$5000(日本円で50万円以上)と定めらています。年収で600万円です。日本の平均給与は年収443万円(2021年)なので、日本の平均以上は必ず提供されます。
もちろん、最低賃金以上に稼ぐ人もたくさんいますので、経験とスキルによっては大きな給与アップも狙うことができます。
6. 通勤がとても楽(満員電車のストレスからも解放)
シンガポールは国土が狭く、その大きさは東京23区程度です。したがって、どんなに遠くに住んでいても、通勤時間は1時間以内です。
また、東京のような満員列車は私はこの5年間見たこともありません。東京のような満員列車のストレスから解放されます。
<生活編>
1. 世界中の人と交流を持つことができる
世界中の人たちと交流を持つことができることをメリットと感じる人も多いのではないでしょうか。私はどちらかというと日本人コミュニティよりも、海外の友人たちと会う方が刺激的に感じるタイプです。
私自信、シンガポール人とフィリピン人と一緒に住んでおり、週末にはドイツ、タイ、マレーシアの友人と交流をしています。
これも、シンガポールならではの魅力です。
2. 近隣諸国に安く旅行ができる
アジアのハブであるシンガポールは、地理的にも便利です。隣接するマレーシアへは、バスで国境を超えるだけで行くことができます。飛行機では、マレーシアの首都クアラルンプールまでは片道1時間、タイのバンコクまでは2時間半、インドネシアのバリ島までは2時間45分です。往復の航空券も1万円〜3万円程度で近隣諸国へ旅行ができます。
私も2023年だけで、ベトナムに2回、タイに2回、インドネシアに1回旅行をしました。海外へ気軽に行けることがシンガポールの魅力です。
3. ワークライフバランスがある
私は日本の広告代理店勤務していました。その頃は、夜は11時、深夜を回ることも多々ありました。日本では、オーバーワークが問題となり、最近は残業も減らす取り組みがあります。しかし、それでも仕事ファーストの社会なので、なかなか仕事とプライベートの両立が難しい場合も多いはずです。
シンガポールは効率重視の仕事スタイルのため、仕事とプライベートをきっぱり分け、仕事さえできれば定時に帰宅し、仕事後もレストランで食事をしたり、ジムに通ったりなど、ワークライフバランスをもった暮らしをする現地日本人をよく見ます。
4. 冬がなく通年で暖かい気候である
暖かい気候が年中続くトロピカルなシンガポールでは、気分も晴れます。夏が好きな人には、シンガポールの天気はおすすめです。湿気が強いことも多いですが、個人的にはあまり気になっていません。日本の冬が苦手な人にはおすすめです。
5. 日本食がどこでも食べられる
シンガポールでは、日本食は最も人気な料理の1つで、どこに行っても日本食のお店を見つけることができます。また、一流の日本人シェフがシンガポールでお店を開いており、価格は高いものの、その味は間違いなし。すき家やスシローなど日本の大手チェーンもあります。日本食が恋しくなれば、いつでも日本食を見つけることができます。
6. アメリカやイギリスよりも、日本人の英語を理解してもらえる
シンガポールは基本的に移民が集まった国であるので、いろんな言語が街で飛び交っています。そのため、シンガポールで英語を話す人たちには、それぞれの出身地の訛りがあります。そのような海外の訛った英語に慣れたシンガポール人たちは、辛抱強く英語を聞いて、理解しようとしてくれます。
アメリカやイギリスなど、アクセントが違うと理解していただけないことも多いですが、シンガポール人は日本人訛りの英語を理解してくれます。
シンガポール現地採用のデメリット
<仕事編>
1. 経験がないと現地採用は難しい(年々ビザ取得も難しくなっている)
現地採用の場合、ほとんど会社は即戦力を求めています。基本的には、どんな求人も実務経験・知識が必要とされており、最低でも2~3年の経験があることが望ましいと言われています。
したがって、日本の大学を卒業してから、そのままシンガポールで現地採用という流れは難しいです。シンガポールの大学に通いながらインターンシップを経て入社する、あるいは、日本である程度経験を積んでからシンガポールで現地採用で転職するような流れが一般的です。
2. 就労ビザを取るためには大学卒業が必要
基本的には、シンガポールで就労ビザを獲得するためには、大卒以上の学歴が必要です。大卒の中でも、高卒の場合、特殊な専門スキルを持っているか、その分野での長い実務経験がないと難しいと言われています。
3. 給与アップは転職が一般的である
日本は年功序列型の給与体型をとっている会社もまだまだ多いですが、シンガポールの会社は基本的に成果主義です。シンガポールで転職する場合、なかなかすぐに昇給はしないため、給与アップを狙って転職することが多いです。2〜3年で仕事を変えるようなシンガポール人も多くいます。
4. シンガポールで別の会社に転職するには再度ビザを発行する必要がある
シンガポールで次の仕事を探して無事に採用された場合、次の会社から就労ビザを改めて発行してもらう必要があります。この時に、就労ビザを申請したが、ビザが降りなかった、というようなケースもあります。もし先に前の会社に辞職を連絡してしまっていたら、就労ビザがなくなるため日本に帰国することになってしまいます。
そのため、外国人がシンガポールで次の転職先を探す場合には、就労ビザが無事所得できてから、現在の職場に辞職の連絡をするケースが多いです。
5. 副業ができない
シンガポールの就労ビザは、副業を認めていません。就労ビザを提供した会社1社でしか働いてはいけないという規則があります。そのため、海外で副業もしたい!という人にとって非常に不便です。特にシンガポールは生活費も高いので、副業してなんとか生活をサポートしたくなるものです。
副業をするためには、シンガポールの永住権を取得するか、起業をして自分のビジネスとして複数の仕事を請け負う、という形になります。
<生活編>
1. 家賃が高く、家探しが大変
シンガポールの家賃は年々値上がりしています。日本から駐在でシンガポールに住んでいる人は、会社が負担するため心配ではないですが、現地採用組からしたら大きな問題です。
シンガポールでは、安い1LDKでも月$2600-$3000(26万〜30万程度)もします。これが本当に辛く、苦労する現地採用組の話をよく聞きます。
シンガポールではルームシェアが節約する方法で、特に海外から現地採用でシンガポールにいる人、シンガポールの大学に通っている学生は、1部屋を借りて数人で住むことになります。その価格は月$800〜$2000(8万円〜20万円)程度です。
1人暮らしをしたい人にとっては、家賃問題はとても深刻です。
2. 医療費が高い(会社の保険で免除される場合もある)
シンガポールは日本のような健康保険が適用されないため、医療費を100%支払うことになります。また、シンガポールは病院ごとがそれぞれ価格を決められるため、病院によって値段も大きく異なります。
したがって、通院が心配される方は、勤務先の会社が法人で保険に加入しているか、必ず確認しましょう。
3. 外食費が高い
生活費が高いシンガポールでは、外食費がとても高いです。例えば、日本風の居酒屋で1〜2 杯お酒を飲むと、簡単に1人1万円程度はかかってしまいます。ビールは1杯1200円程度、カクテルは1杯2500円程度の価格帯で、レストランでは消費税8%の他、サービス料10%も追加されます。
4. スーパーマーケットで安くて新鮮な食材が少ない
私は自宅で料理をすることが好きで、週に2〜3回地元のスーパーに行きます。シンガポールは食料を輸入に頼っているため、日本のスーパーのような地元の新鮮な食材が少ないと感じます。
また日本だとスーパーで刺身やお惣菜などが買えますが、シンガポールにはDon Don Donkiを除き、すぐに食べられる新鮮な刺身や惣菜を売っていません。
個人的には、安くて新鮮な食材が少ないことが、生活上でデメリットに感じています。
5. 老後の資金が心配になる
シンガポールに現地採用に来る人のほとんどは、日本から住民票も外し、年金も支払っていない人が多いと思います。年金は合計25年間を国に納めないと、老後に年金をもらえません。
したがって、現地採用でシンガポールにいる人は、老後の資金をどのように貯めるのか、計画的に考えておく必要があります。
就労ビザでシンガポールに住んでいる人は、シンガポールの年金制度であるCPFにも加入できないので、自身で資金をやりくりしなければなりません。
6. 日本の家族や友人と疎遠になる
これは人それぞれだと思いますが、私の場合は年に1回しか帰省をしていないので、必然と会える人が少なくなってしまいます。また、両親もすでに仕事から引退しており、両親の心身の健康も心配になってきます。
海外に住む人には共通している点ですが、日本にいる家族や友人と上手く向き合って行かなければなりません。家族が心配で帰国する日本人の友人も見てきました。
最後に
シンガポールという国が合う人もいれば、合わない人は必ずいます。最終的には、自分がどんな人生を送りたいのか、しっかりと自分と向き合い、自分の豊かな人生を送ると納得できるかどうかのポイントです。
シンガポールに来て、つまらない国だと言って帰ってしまう方もいますが、長く住んでいる人は、自分自身のパートナーを見つけたり、コミュニティを作ることに成功して、地元に溶け込んでいる人たちです。そして自分の人生を自分で決めて、その決断に責任を持っています。いつまでも人の意見に頼ったり、人に責任を押し付けていては、海外での生活は充実しません。
私自身はEP(Employment Pass)でシンガポールに住んでいますが、いずれは永住権の取得も目指したいと考えています。日本に帰国すべきか、他の国に行くべきか悩むことも多々ありますが、それでもシンガポールは仕事・プライベートの面でも魅力的な国に間違えない国です。
この記事が、シンガポールへ現地採用で転職するためのきっかけになれたら嬉しいです。もしお悩みでしたら、Twitterでお気軽にメッセージください。